バイク愛好家のためのビルトインガレージ付き賃貸集合住宅。
敷地は、間口の狭い路地状の敷地のみが道路に面している旗竿敷地である。
都心部では安全な駐輪場が整備されている賃貸住宅が少ないため、路上駐車や盗難・放火被害がしばしば発生している。特に高級バイクユーザーによるニーズは高く、全ての住戸にバイク用のビルトインガレージを設けることが求められた。
道路から引き込まれた共用通路の奥が、路地の行き止まりのように細長く、暗い谷底のような空間になってしまうことを避けるため、必要な住戸のボリュームと8戸分のエントランスに求められる壁面長を確保しながら、できるだけ広がりのある外部空間になるよう、壁面を円弧状に大きくカーブさせることを考えた。バイクの転回が容易になるだけでなく、通路というよりは広場のような、行き止まり感のない明るい空間になっている。
放射状に配された各住戸間の壁は、室内に鋭角なコーナーをつくることがないよう途中でカーブさせ外壁とは必ず直交させた。壁を途中でカーブさせることで剛性が高まり、回転方向に弱い放射状配置の構造的な弱点もクリアしている。
道路からアプローチの通路、共有の広場、各住戸のガレージ、上階の居室へ、住まい手の行為と同様、道路の延長のように空間もなめらかにつながっていく。
* 2008年度グッドデザイン賞(日本産業デザイン振興会)
* AR Awards 2008, Highly Commended(イギリス Architectural Review)
* 東京建築賞2009 集合住宅部門 最優秀賞(東京都建築士事務所協会)